「ブラック・アイド・キッズ(Black Eyed Kids)」=「黒い目の子供たち」と呼ばれる存在が、近年アメリカで注目を集めている。
その名の通り目玉に白目の部分が無く、瞳の全てが黒い子供たちである。
頭文字をとり「BEKs」とも呼ばれる彼らは、遠目には普通のティーンエイジャーのようにも見える。だが、近づいてみるとその姿は異様で、戦慄を覚えたという目撃談が多数存在しているのである。
彼らは複数で行動するようで、執拗に他人のプライベートな空間に立ち入ろうとする。
彼らの目的などは一切不明で、不可解な話が多い。
目撃談の中からいくつかを紹介してみよう。
ブラック・アイド・キッズの最初の目撃事例は、1998年にジャーナリストのブライアン・ベテルが駐車場で目玉の黒い二人の子供に遭遇した事件である。
ベテルが車内にいると二人の少年が近づいて来た。
少年たちは、車で家まで送ってくれと頼んできたが、威圧的な雰囲気を感じたベテルが拒否すると、少年たちは錯乱したようになり、強引に車のドアを開けようとしたという。
その時、ベテルは少年たちが黒ずんだ異様な目をしていることに気がついた。
恐ろしくなり慌てて車を発進させて逃げたのだという。
2008年には、カンザス州・ハッチンソンにて、ケイティーという名の女性がブラック・アイド・キッズに遭遇している。
彼女が仕事を終えて帰宅すると、自宅敷地内の玄関に続く道に、15、6歳と思われる二人の少年がいることに気がついた。
彼らはパーカーを着ていて、一人は長髪だった。アメリカのどこの街にもいそうな風貌の若者だが、ケイティーは不安を感じていた。
この少年たちは何ヶ月も前から夜遅い時間に付近をうろついている姿を目撃されていて、近所でも噂になっていたのだ。
不気味に思ったケイティーは道路を横断するとすぐに玄関に入ろうとした。
だが、不安を解消しておこうと思い、勇気を出して自分の敷地に入った理由を訪ねた。
すると、少年たちは「電話を貸して欲しかった」と答えた。
ケイティーはこの答えを不審に思い、「電話は持っていない」と答えた。
少年たちは今度は「水を飲ませて欲しい」と言ってきた。
この時、彼女は玄関の鍵を開けているところだったが、彼らのしつこさに怒りを覚え、少年たちの方を振り向いた。
すると、彼らの目に白い部分がなく全てが黒いことに気がついた。ケイティーは自宅に駆け込み、鍵をかけた。
恐怖におののき、呼吸を整えていると、ガラスの窓越しに彼らがこちらを見ていることに気がついた。
ケイティーは家中の戸締まりを確認して回り、再び窓の外を見た。
少年たちはまだそこにいて、ケイティーが家に招き入れてくれることを待っているかのように、彼女の方を見ていた。
ケイティーはキッチンに移動し震えていた。
しばらくしてボーイフレンドが帰宅すると、ようやく彼らは去って行ったのだという。
あるウェヴサイトには16歳の少年によるブラック・アイド・キッズとの遭遇体験談も投稿されているが、かなり興味深いエピソードとなっている。
夜11時頃、投稿者は家の庭でスケートボードをして遊んでいた。
しばらくして、疲れたので休んでいると、2人組の少年がこちらにやってきた。
一人はブロンドの髪で、もう一人は少し年下のようだった。
ブロンドの少年から声をかけられ、こんな会話を交わしたという。
「ねえ、電話をかけたいから、君の家の電話を使わせてもらってもいい?」
「電話なら、おれの携帯電話を貸してあげるよ」
すると彼らは何も答えず、じっと見つめてきた。投稿者は彼らが不気味な真っ黒い瞳をしていることに気がついた。
ここで驚いて逃げ出しそうなものだが、投稿者は少年らしい素朴な疑問を彼らに投げかけた。
「ねえ、そのコンタクトどこで買ったの?」
ブロンドの少年は、「コンタクトじゃない」と平坦な声で答えるだけだった。
「力になれなくて悪いけど、おれは家に戻るよ」
そう言って、投稿者が家の中に入ろうと歩き出すと、後ろからブロンドの少年に肩をつかまれ、こう言われた。
「君は家の電話を僕らに貸すんだ。僕らを家に入れたくないだろうがそうはいかない。僕らは君の家に行くんだ」
その言葉に戦慄を覚えた投稿者はブロンドの少年を殴った。
そして、肩をつかんでいた手が離れた隙に、家に駆け込むと、投稿者は怖くて自分の部屋で震えていたのだという。
数時間後、部屋の窓から庭を覗いてみると、彼らはまだそこにいて投稿者の部屋を見つめていた。
母親に不気味な少年たちの話をしたが信じてもらえなかったという。
「ブラック・アイド・キッズ」とは一体何者なのだろうか。
アメリカのネット界隈でもかなりの話題となり、様々な説が唱えらえている。
例えば「吸血鬼」や「エイリアン・チルドレン」だとする説などである。
これらは吸血鬼との戦いを描いたコミック「ブレイド」などの目が単色に染まる吸血鬼や、宇宙人のグレイなどにも白目が存在しないという、ビジュアル的な類似点から類推されたものだろう。
一番現実的な説としては、やはり「カラーコンタクトを使った悪戯」というものも唱えられているが、数時間もの間、家の敷地内に留まっていることからも悪戯だとしたら相当に質が悪い。
ブラック・アイド・キッズが恐ろしいのは、得体の知れない存在にプライベートな空間が侵されるかもしれないという不安にあるだろう。
ましてや黒く染まった目をした少年たちである。否が応でも不安と恐怖に駆られてしまう。
彼らがいったい何の目的で家に入ろうとしているのか、その不可解さもまた不気味であるが、実際に家に招き入れてしまった報告などはまだ無いようである。
報告できなくなるような恐ろしい事態が待っているのだろうか。
いずれにしろ、ブッラク・アイド・キッズは好ましい客人とはならないことだけは確かであろう。