都市伝説的で語られている存在の中には、知識などを授けてくれものがいる。
たとえば、「さとるくん」などもそのような存在のひとつであろう。
「さとるくん」は呼び出した者のどんな質問にも答えてくれる存在なのだ。
「さとるくん」を呼び出すには、公衆電話を使う。
公衆電話にお金を入れ(10円玉を使わないと行けないと言われている)、自分の携帯電話に電話をかける。
そして、「さとるくん、さとるくんおいで下さい」と2回繰り返し、最後に「さとるくん、さとるくんいらっしゃったらお返事下さい」と言う。
すると、24時間以内にさとるくんから電話がかかってくる。
「さとるくん」は「今、○○にいるよ」と現在地を教えてくれる。
以降、何度も「さとるくん」から電話がかかって、彼が告げる場所はだんだんと近づいてくる。
最終的に「さとるくん」は呼び出した人間の背後に現れる。
そして、ひとつだけ呼ぶ出した者のどんな質問に答えてくれるのだという。
さとるくんが答えてくれるのは、過去の出来事だけではない。これから起こる、未来のことについても答えてくれるのだ。
ただし、注意しなかければならないこともある。
「さとるくん」が背後に立った時に振り返ったり、質問するまでに長い時間がかかってしまったりすると、「さとるくん」に連れて行かれてしまうと言われている。
現代妖怪とも呼ばれる存在で言えば、他にもこっくりさんや同じ系譜にあると思われる、エンゼル様やさかさま様なども知識を授けてくれるものだと解釈することもできる。
このような存在は古今東西を問わず存在し、以前UMAで紹介したホムンクルや件(くだん)、悪魔などの中にもそのような存在を確認することが出来る。
実は筆者の知人にそんな悪魔と接触をもちかけた人物がいる。
風水師のあーりん女子は、強い霊能力も持っており、時に心霊調査を行うこともある人物なのだが、これはその心霊調査の最中に起きた出来事である。
あるとき、あーりん女子は茶羅尼女史や相棒のH女史などと共に共同で心霊調査にあたっていた。
その心霊調査自体は解決することが出来たのだが、ひとつだけ疑問が残り、どうにも解明できずにいた。
そんな時にふいに誰かの声が聞こえてきた。
「ルキフグスに聞いてみな」
それは耳から聞こえた声ではなく、頭の中に直接語りかけるテレパシーのようだった。
その声は小さな天使のような姿をした、影のような存在が語ったものだと感じたという。
結局、あーりん女史は心霊調査の未解決の謎も、この声を語った存在も解明できなかったそうだが、「ルキフグス」という名前だけはいつまでも頭の中に残り続けたという。
その正体は大分あとになって、当時生まれたばかりのインターネットでルキフグスと検索したことでようやく判明した。
ルキフグスとは魔導書「グリモワール」などに記載されている悪魔の名前であったのだ。
ルキフグスは人間に財宝などの隠されているものに関する知識を与えてくれるという悪魔であった。
天使の影のような存在は、あーりん女史に「わからないことは悪魔にきけ」と言いたかったのだろうか。
他にも筆者の知人には、知識を与えてくれる存在と接触した人物がいる。
漫画家の箱ミネコ女史もそうした人物の一人である。
箱ミネコ女史が漫画家として活躍し始めた時のこと、毎晩繰り返しみる夢があった。
それは同じ男が現れ、語りかけられるという夢であった。
男は無機質な白い仮面を被っており、学生時代から度々彼女の夢の中に登場している男だった。
男は彼女に対し、彼女が知らないような話をたくさん語ってくれるのだが、なぜか物理学や科学や数学など、理系の話題ばかりであった。
「この方程式はこうやって解けばいい」
「これはこの法則が関係している」
漫画家である箱ミネコ女史は、理系の話題に興味があるわけでもないうえに、かなり高度な内容だっため、ほとんど理解できなかったという。
なぜ、仮面の男が自分の夢に現れ、理系の話をするのか不思議に思いつづけていた。
そこで、思い切って夢の中でそのことを聞いてみることにした。
ある夜、眠りにつくと、いつものように夢の中に仮面の男が現れた。
彼女は不思議に思っていたことを直接仮面の男にぶつけた。
「なぜあなたは毎晩のように私の夢の中に現れて色々教えてくれるのですか?」
すると、いつもクールな態度を崩さなかった仮面の男が動揺し始めた。
「夢の中で私と会ったことを覚えているのか・・・?」
「ええ、毎晩のように会っているじゃないですか」
「馬鹿な・・・覚えているなんて・・・そんなことあるわけがない・・・」
仮面の男はさらに激しく動揺した。
どうも仮面の男は、夢の中で会っているのを彼女が覚えていることに、相当な違和感を覚えているようであった。
箱ミネコ女史はさらに追求を続けた。
「ねぇ、なんで理系の知識ばかり教えてくれるの? 私は学者じゃないですよ。漫画家ですよ」
この質問を受けて、仮面の男は彼女を見つめたまま動かなくなった。そしてしばらくして、それまでとは別人のような低いトーンの声でこう言った。
「どうやら混線しているようだ。この周波数はおまえと会うためのものではない」
男の話に今度は彼女が困惑させられた。
「周波数? どういう意味ですか・・・? あなたはいったい何者なんですか?」
男はこう答えた。
「私は人間に知恵と発想を授ける“ひらめき”なのだよ」
その夢を見て以来、もう仮面の男は現れなくなったのだという。
このように、さとるくんやこっくりさんなどはこちらから呼びかける必要がある存在だが、その一方で向こうから知識を授けにやってくる存在もいるようだ。
急に素晴らしいアイデアがひらめいたり、なんとなく思ったことが当たったりすることがあるが、それはもしかしたら、知らぬ間に誰かが授けてくれたものなのかもしれない。