多くの追悼すべき事故には不思議な予兆や流言めいたものがささやかれる。
これはタイタニック号や関東大震災の頃から、多々見られる現象である。大きな事故は何かメッセージのようなものがある。
いまだに記憶に新しい尼崎の列車事故だが、その前日、2005年4月24日の共同通信が報じたニュースによると、不思議な出来事が発生したという。
大阪市淀川区のJR東海道線尼崎駅-塚本駅間で、網干発野洲行き快速電車の車掌が、線路のすぐ脇を歩いている不審人物を目撃した。
「なんだ、危ないな、あの男は」
その男は黒い服ですっぽりと全身を覆っている。直ぐさま車掌は、新大阪総合指令所に通報した。
「よし、至急侵入者を確保しろ」
JR西日本は上下線で運転を休止し、駅員が捜索した。
だが男の姿は忽然と消え、発見できなかった。
全身黒い衣装というのが気になる。果たして事故の予兆であったのか?
この不思議な予兆めいた話を聞くたびに、筆者は防げたはずの人災である列車事故にやるせない想いを感じてしまう。