某県に地蔵山という山がある。
この地蔵山という呼び名も俗称で、実際にはもっとつまらぬ名前がついている。
山と言っても塚のようなもので 本当に小さなものだった。
昔からその山にはいやな伝承があったという。
かつて江戸時代の初期に豪農が金の力に物を言わせて、黄金の地蔵をつくり、塚に埋めたという黄金伝説がある。
「貴方が来世も金持ちになるためには、黄金の地蔵をつくり、埋めなければなりません」
そう呪術師にそそのかされ、豪農が納めたものとされている。
地元でも、もはや一部の古老にしか伝えられていない話だが、この黄金の地蔵をめぐって宝探しの狂想曲が繰り広げられた事があった。
この地蔵を掘り起こした者には豪農の祟りがあり、ことごとく死んでしまうと言われ、それがまたトレジャーハンターたちの欲望を掻き立てる原因らしいのだ。
「そんな危険なもの程、探したくなるね」
その埋めた場所を暗号で記した古文書があり、それをもとに多くの男が宝探しに挑戦した。
明治時代に地元の若者5人組が地蔵の発掘に挑んで3人が発狂、1人が自殺、1人が行方不明になったこともあった。
大正時代にも発掘をした人間がいて、この人物も原因不明の病気でうなされ、
「地蔵がくる。地蔵がくる」
とうわごとを言いながら、亡くなった。
「あの宝は呪われている」
古老たちは口を揃えてそう断言する。
そして、昭和の頃にもある成金がこの地蔵の発掘に挑んだ。
「そんなら、山ごと崩してしまえ」
この成り金は強引で、山ごと崩してしまったのだ。
しかし、地蔵は出てこなかった。
「よっしゃ、有効利用や、マンションでも建てたらんかい」
おさまらない成金のおやじは、その土地に大型マンションを建設した。
地元では祟りがあるからやめろという声があったのだが、
「今時、迷信はないでしょう」
そう関係者は笑い飛ばし、工事は押し進められた。
しかし、やはり悲劇は起こった。
現場の視察にきた成金親父が、コンクリートの打設工事を見学していた時の事、柱のコンクリート打設面を押さえていた型枠がはずれ、大量のコンクリートが放出された。
「うわーっ、埋まる埋まる」
成金親父は、流れ出た大量のコンクリートの下敷きになってしまったのだ。
5分後、救出された親父は既に窒息死していた。
そして、その体はコンクリートが全身に付着し、まるで「地蔵」のようになっていたそうである。