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壁に耳あり

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壁に耳あり

これはある有名医大に伝えられている都市伝説である。
あるクラスで遺体を使った解剖実習が行われる事になった。
「おい、今日はいよいよ解剖実習だな」
「なんだが気分がのらないよ」
「実は俺、血ってだめなんだよね」
医学生とはいえ、今回が初めての解剖実習である。
朝から、皆一様に緊張していた。中には顔色が変わっている生徒さえいる。
「なんだよ、みんな、お通夜みたいになっちゃってさ~」
「おっ、Aは随分余裕だな」
「当たり前じゃん、いよいよ俺達、本格的に医者になるんだぜ。むしろ楽しみなぐらいだよ」
クラスのお調子者A君だけ、妙にはしゃいでいた。
日頃からクラスのムードメーカーであった彼は、仲間の緊張をほぐそうとしてか、冗談を連発した。
(仲間の緊張をほぐす為とは言え、Aのやつなかなか気が利くな)
仲間たちは、A君の気遣いに感謝していたという。
ところが、実習も後半に入った時に異変が起きた。

「これからおもしろい事やるよ」
A君はそう言いながら、メスを持ち出すと、遺体の耳を切り取りはじめた。
そして、虚ろな目でへらへら笑いながら、血だらけの耳を壁に貼り付けてこう言った。
「壁に耳あり! なーんちゃって」
もちろん誰も笑わない。室内は水を打ったように静まりかえった。
唖然とする仲間を尻目に、A君は奇怪な行動を続けた。
今度は目玉をえぐり、ドアにあてるとこう言ったのだ。
「障子に目あり!! ひゃっひゃっひゃっ」
「おい!やめろ! 誰かこいつをとめろ!」
止めにかかる数人をふりほどくと、A君は誇らしげに奇妙な行動を続けた。
今度は遺体の口を引き裂いた。
「死人に口なし!」
あまりの行動に、もう誰も動けなかった。
A君の奇行はさらにエスカレートした。
遺体の手足を切断し、
「手も足もでず!!ひゃーひゃっひゃ!!」
A君は全身血まみれの姿で、狂ったように笑い転げた。
冗談を飛ばし、仲間の緊張をほぐすほどの余裕を見せたA君だが、実は一番緊張していたのは彼自身であった。
実習前の行動は仲間のためというより、自分の緊張を和らげようとして行っていたのだ。
だが、それも効果が無かった。
初めての人体解剖という、極度の緊張を伴う行為を続けたことで、彼の精神は破綻をきたし、狂ってしまったのだ。
その後、A君は学校に戻ることは出来ず、退学したという

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