「今日、仕事仲間が地方から出てくるから」
その日の朝、夫の一言を何気なく聞いたTさん。
まさかそれがとんでもない親父との出会いになるとは思わなかった。
「わかった、連絡があれば駅まで迎えにいくわ」
彼女は軽く答えた。
「ああ、頼むよ。僕の帰宅は夕方になるから、その時間に合わせて奴は来るはずさ」
そんな会話がなされた数時間後。Tさんは駅に着いたという電話をその仕事仲間から受けた。
「おかしいわね。妙に早いわ」
いぶかしげに思いながら彼女はその親父を迎えに行った。
その男は大きなベレー帽を被っていた。
「よろしくお願いしますぅ」
親父は不気味な声で話し掛けた。しかもこんな事を言った。
「ああ、お腹すいた。何か作ってもらえますか?」
「はぁ、いいですけど」
図々しい奴だと思ったのだが、夫の仕事仲間であったため我慢し昼食を振舞った。