この呪いに対してトンチで対抗した作曲家がいる。
フィンランドの作曲家シベリウスである。
このシベリウスは交響曲8番を書き上げたところで、迷っていた。
「この曲を渡してしまえば、次は交響曲9番を作らざるをえなくなる。あの呪いから逃れるには、どうしたらいいのだ。」
シベリウスは悩み、とんでもない行動に出た。
なんと、作曲したばかりの交響曲8番を燃やしてしまったのだ。
つまり、8番が失われてしまった以上、いくら作曲しようが、9番と数えられる交響曲はないことになるわけだ。
この戦略は成功した。
シベリウスはその後、順調に作曲活動を続け、なんと91歳まで生き、その長寿をまっとうしたのだ。
また作曲家のショスタコービッチは68年の人生で交響曲15番まで作曲し、呪いなどまったく感じさせない働きを残している。
現実問題としては、交響曲9番にとりかかる作曲家はベテランで中年以上が多い上に、交響曲という大作を9曲も作ったら、体力的にも精神的にも疲れ果てて死んでしまう可能性が高いということではないだろうか。