確かに交響曲9番を作ったあとにブルックナー、ヴォーン・ウィリアムズは死亡している。
作曲家たちもこの不気味なジンクスに怯えていた。
ベートーベンを敬愛していたシューベルトは、交響曲第8番を書いた後、ベートーベンの訃報に接し、あの有名な「未完成交響曲」の第3楽章までしか作曲していない段階で死んでしまう。
このとき、シューベルトは弱冠31歳である。
このシューベルトの死により、『交響曲9番を書くと死ぬ』という不気味な噂が立ったのである。
あのドボルザークも「交響曲9番(新世界より)」を完成させた直後に亡くなってしまう。
これで呪いの噂が完成してしまうのである。
グスタフ・マーラーはこの呪いのことをすっかり忘れており、作曲し終わったあとに気が付いた。
マーラーはひどく恐怖し、すぐさま交響曲10番の作曲に入ったが、どうもうまくいかない。
まだ年齢的にも50歳の手前だったマーラーは、焦って交響曲10番に取り組んだが、病気で命を落としてしまった。
なお彼の死後、彼が残した部分的な作品が再編されて、マーラーの交響曲10番は完成させられた。せめてもの救いであろう。
なおマーラーは、作曲した交響曲8番を交響曲ではないと主張して、呪いのジンクスから逃れようとしたとも言われている。