アニメや漫画の話をすると、古い作品やマイナーな作品と、新しい作品が酷似していたり、日本の作品とアメリカの作品がまったく同じ設定だったりすることがあり、それに付随した都市伝説はよくささやかれている。
数年前に、話題となったもので「韓国のガンダム裁判」というものがある。
韓国国内で販売されていたガンダムの海賊版ビデオやパチモン玩具に関し、著作権侵害であると訴えたところ、版権を持つサンライズが敗訴したというものであった。
あくまで都市伝説であると思われてきたが、これは実話であったのだ。
1991年、ホビープラザが、ガンダムを韓国にて商標登録する。
1993年には申請された商標登録が完了する。
このように商標登録も行われている「ガンダム」という明らかな日本のアニメの固有名詞を巡って、トラブルが起こったのだ。
「韓国のガンダム裁判」でサンライズが敗訴した理由は、次のようなものであった。
韓国のおもちゃメーカーは1981年から10年以上に渡り、ガンプラを作っており、複数の業者がガンダムと呼ばれるロボットのプラモデルを制作・販売してきた。
既に1991年の商標登録の時には、ガンダム=空想ロボットの図式が出来ており、ガンダムはロボットを意味する一般名詞であり、ガンダムの商標登録は認めないというものであった。
このとんでもない理由により、ガンダムの生みの親であるサンライズが敗訴するという異常な事態となったのだ。
まったく馬鹿げた話である。
小手先の理屈で裁判に勝ったところで、国際的な常識に照らし合わせた行動ができない限り、韓国のアニメ業界の将来は無い。
ガンダムという日本のブランドに寄生するようなプライドの無さがある以上、何時までたっても日本アニメの下請けという国際的な評価を覆すことはできないと思うのだ。
なお、アニメ王国日本の作品は、アメリカからも模倣されている。
『ライオン・キング』(ディズニープロダクション 1994年)と『ジャングル大帝』(手塚プロ)が類似している問題はあまりにも有名である。
当時、ディズニーが手塚作品を模倣したのではないかと世界中で話題になった。
1994年7月11日に『サンフランシスコ・クロニクル』紙が、この盗作疑惑を報道すると、ディズニー側は7月14日に回答を寄せた。
スタッフ全員、公式にアメリカで放送された『ジャングル大帝』を見ていないというのだ。
あくまで偶然と言い張ったわけである。
しかし、アニメ好きのディズニーのスタッフが、誰も『ジャングル大帝』を見ていないことなどありうるのであろうか。
元々、『ジャングル大帝』の制作時、虫プロのスタッフたちは「手塚作品でディズニ―を超えるのはジャングル大帝しかない!」という意気込みで取り掛かったのだが、結果的に酷似した作品がディズニーから出てくるとは思わなかったであろう。
運命の皮肉とはこの事である。
あくまで偶然である、とディズニー側が言い張る『ジャングル大帝』と『ライオンキング』の一致点だが、主要な配役も似ている。
酷似するキャラクターたちを確認してみよう
レオと恋人のライヤ(ジャングル大帝)、シンバとナナ(ライオンキング)。悪役ライオンのブブ(ジャングル大帝)、スカ―(ライオンキング)。知恵のあるマントヒヒのマンディ(ジャングル大帝)、ラフィキ(ライオンキング)。おしゃべりな鳥のココ(ジャングル大帝)、ザズ―(ライオンキング)。小悪党のハイエナ・ディックとボウ(ジャングル大帝)、エドと部下たち(ジャングル大帝)。
ここまで一致する事など、はたしてありうるのか。
例え偶然であったとしても、世界的なアニメーションプロダクションが他国のヒットアニメをリサーチしていないという脇の甘さや、結果的に二次創作のような印象を与えてしまったミスは言い逃れできないのではないだろうか。
ちなみに、手塚プロダクションや遺族は仮に盗作だったとしてもディズニー側と裁判などは起こさないという。
その理由は「ディズニーファンだった手塚治虫が、もしこの一件を聞いたら怒るどころか光栄なことだと喜んでいたはずだ」と回答したのだ。
流石手塚プロは器がでかい。
百獣の王についてのアニメを作るには充分な器のでかさである。
やはり、手塚プロダクションは、アニメ界の「ジャングル大帝」である。
ディズニーの盗作疑惑はこれだけではない。日本が誇るアニメ制作会社ガイナックスの作品と酷似したものがあるのだ。
『ふしぎの海のナディア』(NHK総合で1990年4月13日~1991年4月12日)と、ディズニープロダクションの『アトランティス 失われた帝国』(2002年)がこれまた酷似しているのだ。
以下、酷似するキャラクターを並べてみよう。上段が『ふしぎの海のナディア』で下段が『アトランティス 失われた帝国』の各キャラクターである。
アトランティスの女王ナディア
アトランティスの女王キーダ
丸眼鏡が蝶ネクタイがトレードマークのジャン
丸眼鏡と蝶ネクタイのマイロ
ブロンドの白人女性でナディアの副長エレクトラ
ブロンドの白人女性が副長
他にも船医が両作品ともスキンヘッドであったり、操舵長も共に口髭を生やした人物であるなど、似ているキャラクターが多い。
特にナディアとキーダの特徴は恐ろしく似ている。
二人とも青いクリスタルのペンダントと金の腕輪に丸いイヤリングを見につけ、ビキニを着ているのだ。
しかも、アトランティスを救うために、いざという時には胸のペンダントが青く輝くという設定まで同じである。
これら全てが偶然で片付くものであろうか。
両作品共にジュール・ヴェルヌによる『海底二万マイル』を原案に作られた作品であるから、似てしまうのは仕方が無いという意見もある。
しかし、『ふしぎの海のナディア』と『海底二万マイル』はノーチラス号という潜水艦の名前が同じだけで、まったく違う世界観になっている。
従って『海底二万マイル』を真似たとしても、『ふしぎの海のナディア』と酷似する作品になるはずがないのだ。
もうひとつの事例をあげてみるなら、実は『ふしぎの海のナディア』と『天空の城ラピュタ』は同じ企画を元にした作品であった。
元々、宮崎駿がNHKのテレビアニメシリーズとして、海底を舞台にした企画をつくったのだが、これは実現しなかった。
宮崎駿はこの企画を元に、大幅に設定を変更し、空を舞台にした『天空の城ラピュタ』を作った。
一方、企画自体はNHKに残されていたままだったので、これをNHKがガイナックスと共に企画を練り直して生まれたのが、『ふしぎの海のナディア』なのだ。
だが、完成した両作品は、まったく別の世界観を有し、もちろんファンからもそれぞれ違った作品として評価を受けている。
こうしたクリエイティビティこそが、オリジナリティという問題を考えるにあたって、重要なポイントなのではないだろうか。
他にも、漫画に関する盗作疑惑は多数噂されている。
松本零士が、ミュージシャンの槇原敬之を糾弾した事件がある。
松本零士の主張によると『銀河鉄道999』のナレーションの表現を槇原敬之が盗作した!? というのだ。
この両者の作品を比較してみよう。
松本零士は漫画『心の旅人』(銀河鉄道999 第21巻 小学館)で、「時間は夢を裏切らない 夢も時間を裏切ってはならない」という文言を記している。
一方、槙原敬之の作詞した作品『約束の場所』を見てみると、「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」というフレーズが登場する。
確かに似ているといえば似ているフレーズである。
ちなみに、松本零士は『宇宙戦艦ヤマト伝説』(フットワーク出版)で、『スターウォーズ』の企画書に掲載されている初期設定のレイア姫は、『宇宙海賊キャプテンハーロック』の有紀蛍と類似しているとも指摘している。
また、劇場版2作目『さよなら銀河鉄道999アンドロメダ終着駅』に登場する鉄郎の父親である黒騎士ファウストは、『スターウォーズ』旧3部作に登場するダース・ベイダーとの類似点があると主張している。