都市伝説でささやかれるキャラクターの中でも、屈指の知名度を誇るのが花子さんであろう。
花子さんは1950年代頃から原型とも言える存在が語られており、80年代頃から注目を集め、90年代に人気が爆発し、“学校の怪談ブーム”の立役者ともなった。
最も一般的な花子さんの話は、このようなものであった。
学校の3階にある女子トイレ。そこで個室の扉を3回ノックし、『花子さんいらっしゃいますか?』と尋ねる。
この行動を手前の個室から3回ずつ繰り返していくと、3番目の個室から返事が聞こえる。
その扉を開けるとおかっぱ頭で赤いスカートをはいた女の子、花子さんがいる。
そして、花子さんに出会った者は便器の中に引きずりこまれてしまう。
この花子さんには、実は「花子さん一族」とも呼べるような、類似するキャラクターが多数存在している。
今回はそんな花子さんの一族を紹介してみようと思う。
花子さんの兄妹と言われているのが「太郎くん」と「次郎くん」である。
太郎くんは花子さんをそのまま男子トイレに移植したような存在とも言われ、別のパターンでは、太郎くんは人が通るのを待ちかまえていて、3人通ると麦わら帽子と雑巾を持って現れ、じっと見つめるのだという。
次郎さんも男子トイレに現れる。男子トイレの3番目のドアを20回叩き、「次郎さん、あそびましょ」と呼ぶと「わかったよ」という声が聞こえる。
すると、天井に次郎さんの影が現れるという。
また、花子さんには「ブキミちゃん」という名の妹がいるとされているが、このブキミちゃん、相当に強烈なキャラである。
ブキミちゃんはトイレの一番奥の個室にいると言われている。
顔は醜く膨張していて、体は丸々とした肥満体。口からは泡を吹き、手には首のない人形を持っている。
性格は非常に残忍で、何よりも血を見ることを好む。そして、かわいい子などを見つけると、捕まえて首を引きちぎるのだという。
更には、人に憑依することもでき、ブキミちゃんに憑依されると虫を食べたくなり、最終的には自殺に追い込まれるという悪の限りを尽くす。
ブキミちゃんは水死した人間とも言われているが、それにしても極悪な存在である。
花子さんの家族は他にもいる。彼等もやはり学校のトイレに住んでいるようだ。
女子トイレの1番目には花子さんのお父さん、2番目には花子さんのお母さん、そして、3番目が花子さん。男子トイレの2番目には花子さんのおじいさんがいるとされている。
更には、「花男」「小花子」という親戚までいて、なんと花子さんの一族は1年に1回、群馬で集会を開き、それからの1年の方針を決めるのだという。
いったいどんな方針を決めているのか、非常に気になる集会である。
また、花子さんにはライバルの存在までも噂されている。
それは「やみ子さん」という女の子で、トイレの2番目の個室にいるという。
扉を42回叩き花子さんを呼ぶと、「わたしはやみ子よ」と言ってやみ子さんが出てくる。
彼女は「あそんで」と声をかけてくるが、「いいよ」と答えると闇の世界に連れて行かれてしまう。「いやだ」と答えると殺されてしまうという。
このように、想像力豊かな子供たちによって、花子さんから派生した妖怪は数多く語られているのである。
「妖怪が育つのは平和の証し」とは水木しげる氏の言葉だが、日本もまだまだ捨てたものじゃないようだ。