ある人物が街をぶらぶらと歩いていると、腹が減ってきたので、近くにあったラーメン店に入った。
そこはどこの街にもあるようなラーメン屋で、地味な印象の店だった。
だが、ラーメンを食べてみると抜群に旨かった。しかも価格も500円と安い。
これは隠れた名店を発見したと喜び、翌日もラーメンを食べに店に行くことにした。
しかし、店が見当たらない。ラーメン店があった場所には廃墟があるだけで、昨日のラーメン店はどこにもなかった。
場所的にはその廃墟がある場所で間違いがなかった。
不審に思って廃墟の中を覗いてみると、自分が置いた500円玉が置かれたままになっていた。
昨日食べたあのラーメンはいったいなんだったのだろうか。
このような幽霊ラーメン店の噂は他にも存在し、『オンナのコたちが語り伝える恐怖のホラー階段』(二見書房)などにも「幻のラーメン屋」として同様の話が掲載されている。
このようにあるはずの店がなくなっているという話は、都市伝説や怪談などでも多く語られている話で、ラーメン屋ではなく、スナックなどの飲み屋のパターンなど様々な噂がささやかれている。
これらの話とはやや趣が異なるが、幽霊が出るラーメン店の話しも存在する。しかも、この店は実在するというのだ。
このことが明らかになったのは、ある裁判がきっかけであった。
それは栃木県のラーメン屋の男性店主が起こした裁判で、店舗として借りた物件に幽霊が出ることを隠していたとして、不動産屋を訴えたのだ。
この店主は2006年に自宅兼店舗として、元日本料理屋だった物件を借りたのだが、店主や店の客が白い影を見たり、無人のはずの場所から物音が聞こえてきたりと怪現象が立て続けに起き、客が来なくなってしまったのだという。
この建物が出来たのは1999年、ある男性の一家が洋食店を開くために建てられたものだった。
だが、店を開いてから4年後に、店主である男性が交通事故で亡くなり、妻と子供たちも建物から出て行った。
そこに、日本料理屋が入ったのだが、この頃から怪現象が度々起きるようになる。
夜中誰もいないはずの厨房に人がいたり、料理をする物音が聞こえてくるようになった。
こうした噂が広まり日本料理屋は長く続かず、空き家になった。そこに、くだんのラーメン店が入ったのだ。
このように、当地では幽霊が出るとして、有名な物件だったらしく、このことを一切聞かされていなかった店主が不動産屋を訴えたのであった。
最初のオーナーである洋食店の店主は、今もその物件の厨房で料理を続けているのだろうか。