終戦後、元々の出身である山奥の実家には帰らず、高知市で暮らしていた。
戦争年金がでるのだろうか。老人はとくに生活に困った様子は見られなかった。
生き残った他の家族は他県にいるようで、ほとんど姿を見せなかったという。
しかし、異形の老人は周りからは白い目で見られていた。近所でもつまはじき者であったのだ。
そんな中、A君は唯一老人と親しく付き合った。老人の車椅子を押したり、自宅に遊びに行ったりした。
A君にとってはごく普通の行動であったのだが、老人には嬉しかったのであろうか。
そのうち、老人は自分の秘密を打ち明けるようになった。