福岡県宗像市にある、福岡教育大学の美術科教棟の幽霊伝説は有名である。
当時、学生達の間で囁かれた噂では、無数の幽霊が棲んでいるといわれてた。実際に霊を目撃した人もいたという。
また、校舎の端のテラスに通じる屋根のない階段は、学生の間では「首吊りの階段」と呼ばれていた。
この階段には不気味な噂があった。
「この階段は何故首吊りの階段って呼ばれているの?」
「それなんだけどさぁ、かつて絵を厳しく批判されて悩んだ学生が首を吊ったからだってさ」
この階段では“見える人”には霊がうようよ見えたという。
これは、当時そこの学生だったR君の体験である。
ある日、授業が長引いて既に外は暗くなっていた。ようやく開放され、2階の教室を出た途端、彼の前を歩いていた人が、
「うわっ、見てしまった!」
と叫んだ。
「どうしたの?」
すかさず彼が聞くと、その人はこう言った。
「階段のある方に、着物の袖と白い手の部分だけ…見えたんだ」
実は、この辺りには戦国大名の宗像氏の菊姫に纏わる怪談が伝わっている。
非業の死をとげた菊姫であったが、まだまだ無念の想いが強いらしく、自分の命日には、己の首を探して大学の付近をさまよい歩くという。