小学校時代に奇妙な体験がある。
それは、いなくなったクラスメートB君の事である。
(おかしい、何故みんなあいつを覚えてないんだろうか)
ある日突然、同級生のB君がいなくなるという事件があった。
事件直後はちょっとした噂になったが、何故かクラスメートが全員、B君の事を覚えていないというのだ。
それは、小学校4年生の頃の話であった。
「ドリフのモノマネやるよ」
今もB君の声を思い出す事があるという。
おもしろい奴でタレントのものまねをやったり、プロレスごっこをしたりして、いつもクラスの人気者だった。
(それなのに2年経った今では誰もおぼえちゃいない。一体どうしたってんだ)
みんな同級生をたった2年で忘れてしまうのだろうか。
6年生になった頃には、4年生の時同じクラスだった奴、誰に聞いても一様に知らないというのだ。
「そんな奴…いたっけな」
「おまえの妄想じゃねえの?」
小学校の仲間うちでは、完全にB君の記憶は失われているのである。
確かにB君には変なところもあった。
自分は超能力があると言ってスプーンをまげたり、今夜のプロ野球の結果を当てたりしていた。
(気味が悪いので、どっかに連れていかれたのか?でもそれはあいつ一流のショーマンシップであって、決して不快なものではなかったはずだ。それなのに何故なんだ)
そう、あいつは突然いなくなった。
4年生の2学期の終わり頃だったと思う。
普通の転校生なら挨拶ぐらいするだろう。
挨拶もなく、ある朝、机ごと消えてしまったのだ。そして、誰もその事を不思議がらない。覚えてすらいない。
そう、まるで最初からB君がいなかったようにふるまうのだ。
ある時Kさんは、T君にこの事を尋ねてみた。
不思議そうに首をかしげるT君はこう言ったのだ。
「僕もずっと考えてたんだ。君って3年生の時、ある朝、突然同級生になってたよね。まるで昔っからの友人みたいに」